虚血性脳障害治療薬としてのET受容体拮抗薬の可能性を追求することを目的として、in vivo及びin vitro病態モデル系を用いた実験を行った。(1)RES-701-1(ETB拮抗薬)は線条件におけるET-1およびET-3のドパミン遊離刺激作用を抑制したが、BQ-123(ETA拮抗薬)は抑制しなかった。(2)hypoxia/hypoglycemia期間中にET-1を負荷すると、その後のテスト刺激応答は50-60%減少し、これは2時間後でも回復しなかった。そこでこれをin vitro脳虚血モデルとして用い、薬効評価を行った。その結果、ETB拮抗薬がET誘発線条体機能障害に対して有効であった。またETB受容体機能を媒介する一酸化窒素に注目し、その合成酵素阻害薬(NG-methyl-L-arginine)の作用を調べたところ、この阻害薬はET誘発線条体機能障害を改善した。(3)Pulsinelli等の方法に従い、ラットに一過性の脳虚血を負荷した(in vivo脳虚血モデル)。10分後に各薬物を脳室内注入し、術後7日目に海馬の組織学検索を行い、CA1錐体細胞生存数を計測した。ETB拮抗薬およびT-0201(ETA/ETB拮抗薬)が虚血性脳神経細胞死に対して保護作用を示した。(4)脳虚血の負荷7日後、海馬CA1錐体細胞死の発現とともに錐体細胞層近傍において125I-ET-1結合量が著名に増大した。これはETB受容体数の増加によるものであった。 本研究は、ETB拮抗薬の脳保護薬としての有効性を示し、虚血性脳障害治療薬の展開に新しい標的を提供するものであった。
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