研究概要 |
ヒト、ブタの肝臓、小腸粘膜を用いたニトログリセリン(GTN)の代謝について、その代謝に重要なグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)の分子種の同定を行った。その結果、動物種に関係なく、肝臓中にはGSTaが主であり、小腸ではGSTmが主であることを明らかにした。GTNの代謝は、GSTaにより1,2-GDNが生成し、GSTmで1,3-GDNが産生された。Caco-2細胞がGSTmを発現し、ヒト小腸で観察されるGTNの代謝の結果をCaco-2細胞で観察できることをつきとめた。また、アルカリフォスファターゼ、スクラーゼ、エステラーゼをCaco-2細胞は産生し、エステル型薬物(プロドラッグを含む)の代謝パターンが、ヒトの小腸粘膜の結果とほぼ一致することを見い出した。インドメタシンのアミド結合を水解する酵素は、ブタの肝臓ミクロソームに局在する非常に不安定なカルボキシエステラーゼであることを明かにした(km:68μM,Vmax:9nmol/mg protein/min)。この酵素はマウスのES-maleと高い相同性を有しており、通常エステラーゼの基質として用いられるa-ナフチルアセテートやp-ニトロアセテートは水解しなく、アニラセタム以外の市販のアミドまたはエステル結合に対しては何ら水解作用を示さなかった。ヒトではインドメタシンの代謝物としてアミド結合の水解物が検出されているので、ブタと同様に現在までに報告されていない不安定なエステラーゼに属する酵素の存在が推定され、その役割を明かにすることによってアミド結合を有する薬物の代謝を予測し、相互作用を検討することができるものと考えられる。さらにプランルカストのヒトとラットの代謝様式が異なることを明かにするため、プランルカストを基質としてその酵素を精製した結果、従来から知られている肝臓ミクロゾーム画分のカルボキシエステラーゼ(hydrolase B)で代謝されていることを酵素化学的に証明した。この酵素は、ヒトの肝臓中の酵素とその基質特異性が異なり、プランルカストの代謝に種差が生じたものと考えられた。
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