研究概要 |
脳高次機能改善を目的としたカルシウム(Ca)拮抗薬の脳内受容体結合動態および血液脳関門透過性を明らかにする目的で、顕著な学習行動障害を示す遺伝性老化促進マウス(SAM-P/8)を用いてCa拮抗薬の脳内動態ならびにin vivoでの脳内Ca拮抗薬受容体結合動態を調べ、正常老化マウスのSAM-R/1の場合と比較した。 [実験成績] 1. SAM-R/1とSAM-P/8に(+) -[^3H]PN 200-110を靜注後3〜30分の脳内濃度推移から求めた薬物速度論的パラメータにおいて、消失速度定数(Ke)および平均滞留時間(MRT)は両群で差異がなかったが、SAM-P/8の脳内濃度-時間曲線下面積(AUC)が33%,その血漿中AUCとの比が40%,いずれも有意に低値を示した。 2. SAM-R/1とSAM-P/8に(+) -[^3H]PN 200-110を靜注後の脳における特異的結合を測定したところ、SAM-P/8においてSAM-R/1に比べ51%有意に低値を示した。また(+) -[^3H]PN 200-110の特異的結合と血漿中濃度の比においてもSAM-R/1に比べSAM-P/8で有意に減少した。 3. [^3H]ニモジピンと[^3H]アムロジピンの靜注後における脳内濃度、血漿中非結合型薬物の脳分配係数およびCa拮抗薬受容体結合量を測定したところ、これらのパラメータはいずれも[^3H]ニモジピンで[^3H]アムロジピンより高値を示した。 以上の結果より、SAM-P/8では脳内Ca拮抗薬受容体の減少によるCa拮抗薬の脳内分布の変動が示唆された。またニモジピンはアムロジピンより脳への分布が大きいことが示され、この相違が中枢作用(前年度の研究で認めた学習行動障害の改善効果)の強弱に寄与すると考えられた。
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