研究概要 |
血管内皮細胞は、過酸化水素処理により重篤な細胞傷害を発生する。この傷害発生過程における一酸化窒素(NO)産生およびNO合成酵素(NOS)活性変動を検討した。ウシ大動脈から剥離し6〜10代継代培養した内皮細胞を用い、NO産生及びNOS活性は、L-Arginineからl-Citrullineへの変換量から推測した。細胞内Ca^<2+>はFluo-3、細胞損傷はPropidium iodideの蛍光強度を共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて測定した。その結果、NOS活性は、過酸化水素処理により内皮細胞が壊死する直前まで維持されることが判明した。細胞壊死が生じる直前に大量のCa^<2+>が細胞内に流入し、NOS活性を上昇させることが認められた。NO産生の促進が以後の細胞傷害に対してどの様に関与するかは明らかでないが、特に生体内でのNOの作用が多岐にわたることから、病態下におけるNOの役割を検討することは意義あることと考える(百瀬担当)。 摘出組織から遊離するNO測定用電極を開発した。ノイズ除去のため、気体のみが透過可能な膜で電極を三重に覆った。NO産生原料でるS-nitroso-N-acetyl- d, l-penicillamine (SNAP)を10^<-7>M含む溶液で電極は応答した。この応答は、高酸素濃度条件下では、生成されるNOが速やかに参加されるためにNO産生量は測定できなかった。SNAPから遊離するNOを化学的に定量した結果と比較すると電極ではnMオーダーでの測定が可能であった。摘出モルモット大動脈を切開し、内皮細胞面に電極を接する状態にしてカルバコールを適用するとNO遊離が検出され、NO合成阻害薬の存在でこの応答は抑制された。生理的条件下での測定に電極法は使用可能と結論した(石田担当)。
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