高脂血症患者のアポA-IV遺伝子多型性の出現頻度について、健常者のそれと比較した。健常者のコドン347は全例Thr/Thrのwild typeであり、これは高脂血症患者においてもすべて同様にwild typeであり、差異は認められなかった。これは欧米でのSer alleleの出現頻度が0.144から0.216であるという報告と著しく異なっており、人種的な差が確認された。これはdirect sequenceによって証明した。一方コドン360に関してはGln/Hisのヘテロが高脂血症患者全体においては17.5%存在しており、これは健常者の22%に比べ統計学的有意差は認めなかったものの低値であった。なおこの日本人健常者のGln/Hisの出現頻度は欧米の報告の14〜15%に比べ低値であり、やはり人種差が認められた。このコドン360の変異は蛋白レベルにおいて、Gln/GlnはA-IV-1、His/HisはA-IV-2の2種類のアイソフォームに相当している。A-IV-2を示す人はA-IV-1に比較してHDL-Cが高く、またLCAT活性も上昇しているといわれている。さらに小腸におけるコレステロールの吸収がA-IV-1に比べlow responderであるとする報告もあり、これらアイソフォームにリポ蛋白代謝の面で機能的差異のあることが指摘されている。この点から考えると、今回の高脂血症患者におけるGln/His (A-IV-2)の出現頻度が健常者に比べ少なかったことは、少なからずこの変異が高脂血症に関与している可能性を示唆するものである。また今回の検討では高脂血症のタイプ別におけるこれら多型性頻度に差は認められなかったが、症例数を増加してさらに検討する必要があると考えられた。
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