1.分析法の改良-尿中フィブロネクチン(FN)代謝物の分析法を改良した。 種々泳動条件、試薬、検出条件を検討し、原尿数十μlを検体として約6時間で、尿中へのFN代謝パターンを分析可能とする方法を確立した。 ほぼ当初の目的を達成したが、さらに分析時間の短縮化ならびに簡易化を試みたい。 2.がん患者尿中のFN代謝物の分析-健常者30例、肝がん10例、肺癌14例について尿中FN代謝物を分析比較した。 健常者では5〜8種の代謝フラグメントが検出され、主要フラグメントについては個人差、性差を特に認めなかった。 肝がん、肺がん症例のうち各2例および5例については明らかに尿中FN代謝フラグメント排泄が増加していた。 特に10Kのフラグメントの著増を認めた。 症例数が十分ではないものの、がん患者では尿中へのFN代謝物の排泄が増加することを示唆する結果であり、さらに症例を重ね検討する予定である。 3.がん特異的FN代謝フラグメントの同定-3種のドメイン特異的モノクローナール抗体を用い分析した結果、検出されたフラグメントは主として細胞接着ドメインを含むものであることが明らかとなった。 がん特異的代謝フラグメントの同定までは至らなかったが、この結果は細胞接着ドメインを含む比較的高分子のフラグメント中にがん特異的フラグメントの存在する可能性を示すものであり、臨床検査医学的に有意義なフラグメントの同定と特異的検出法の確立を目標とし、研究をさらに継続する。
|