静岡県立こども病院血友病包括外来に通院あるいは入院中のHIV抗体陽性の血友病患者に、HIV逆転写酵素阻害剤Stavudine (d4T)単独使用の機会を得たので、患者血清中HIV-1RNA量の競合PCR法による測定および他のHIVマーカーの測定を経時的に行ない、臨床症状と比較検討した。対象はAZT、ddI、ddC無効の血友病患者7名(AC3名、ARC2名、AIDS2名)と、非血友病患者1名(ARC)である。 d4T単独投与期間は28〜44週で、24週時のCD4細胞数はAC2例とARC1例でそれぞれ42%、44%、70%の上昇が認められたが、ARCとAIDSの各1例ではそれぞれ21%、47%減少していた。血清中HIV-1RNA量は、4週までは13〜84%の減少を示したが、4例では12週までに、他の4例でも24〜36週までに再増加に転じた。IgAはAC2例とARC2例で低下したが、他は大きな変化を示さなかった。β2-MGはAIDS1例でやや上昇した。p24抗原陽性を示したのは8例中3例のみであった。臨床症状は、AIDS症例で倦怠感、食欲不振、下痢等の症状の改善が2〜4週で認められ、またリンパ節腫張は4例中2例で改善がみられた。 d4Tは単独投与でも臨床症状を改善し、AIDSの進行を抑えると考えられる。血清中HIV-1RNA量は、一旦は減少したものの、再度増加傾向を示しており、耐性ウイルスの出現が示唆された。ddIやprotease阻害剤のような他の抗HIV剤との併用が必要と考えられる。
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