研究概要 |
静岡県立こども病院血友病包括外来に通院中のHIV抗体陽性の血友病患者21名と非血友病患者3名の保存血清について競合PCR法によるHIV-1RNAの経時的定量を行ない、臨床症状および臨床HIVマーカー(CD4陽性T細胞数、CD4/CD8陽性T細胞比、IgG値、IgA値、β2ミクログロブリン量、p24抗原量)と比較した。血清中ウイルスRNA量は他の臨床HIVマーカーに比して抗HIV剤による治療効果を最も的確に反映していた。また、病状の悪化に先立ってウイルスRNA量の急激な増加が観察され、治療抵抗性を示した患者においてもウイルスRNA量の増加が認められた。以上の結果から、血清中HIV-RNA量の測定は抗HIV剤による治療開始時期や治療効果の判定、薬剤変更時期、HIV感染の予後判定等において、CD4陽性T細胞数を初めとする他の臨床HIVマーカーよりも確実な指標となる得ることを証明した。 プロテアーゼ阻害剤投与患者や長期未発症患者においては、血中ウイルスRNA量が100コピー/m1以下を推移する場合が多い。アンプリコアHIV-1モニター(Roche Diagnostic Systems)は,臨床の場において血中ウイルスRNAの概量(1og オーダー)を知ることを可能にしたが、定量的検出限界は400-800コピーである。プロテアーゼ阻害剤の治療効果判定や長期未発症患者の病態進展予測には100コピー以下の血中ウイルスRNA量の消長を追跡する必要があり、競合PCR法によるウイルスRNAの定量は極めて有効な手段となり得る。 今後は競合HIV-1RNA作製、血中ウイルスRNAの抽出・精製の簡易化、競合PCR感度の改良が必要と考えられる。
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