研究概要 |
当該年度に、我々は以下の点について解析をすすめた。対象は小児急性リンパ性白血病(ALL)症例である。 1. 既報のT細胞の受容体(T cell receptor,TCR)γ・δ鎖遺伝子再構成に加え、免疫グロブリン重鎖(immuno globukin heavy chain,lgH)再構成を指標とし、微小残存病変(minimal residula disease,MRD)の検索が可能な症例の頻度。 2. ジゴキゲニン標識プローブを用いたTCRγ・δ遺伝子再構成症例の寛解時検体におけるMRD診断。 3. 新たな染色体転座を指標にしたMRD診断の可能性。 解析結果 1. 初診時の白血病細胞DNAをPCR増幅したところ、119例のB-precursor ALLのうちTCRδ、γ鎖、lgH鎖遺伝子再構成の頻度はそれぞれ61%,55%,91%であった。解析した症例全例でいずれかの再構成がみられた。少なくとも2つ以上の再構成を持つ症例の頻度は87%であった。 2. 初診時の白血病細胞DNAをPCR増幅することで得られた遺伝子再構成結合部の増幅産物をジゴキシゲニンでラベルする方法、増幅した結合部の塩基配列を解析し、症例特異的オリゴヌクレオチドを合成しジゴキシゲニンでエンドラベルする方法のいずれかで、MRDを検出する方法を確立した。 3. 最近、12;21転座に伴うTEL/AML1遺伝子再構成が小児precursorB-ALLの約20%で見られることが報告された。われわれもprecursorB-ALLの18%でRT-PCR法によりこの異常を同定し、寛解時の検体を対象として10^<-3>から10^<-4>の感度でMRDの定量が可能であることを示した。
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