本年度は予定どおり、おおむね順調に研究が進められた。 尿蛋白測定プロフィルがシステムとして完成が導かれるためには、尿蛋白の標準物質の作製による標準化が将来必須となる。近年、国際臨床化学連合から新しい標準品(RPPHS/CRM470)が作製さら、本邦に導入された。尿蛋白測定のための標準物質の基準となる標準品であり、そこで本標準品の評価を行い、安定性、安全性、表示値、成分の免疫学的挙動などいずれも、新鮮血清にきわめて近似していることを新たに明らかにした。RPPHS/CRM470をベースに国際的コンセンサアスの下で新しい標準品作製のための基礎準備が完成された。 尿中蛋白プロフイルについては、ラテックス凝集反応による測定感度、特異性、精度に優れた尿中α2マクログロブリンの微量測定法を開発した。また不安定性と言う困難な課題を抱えているが、同法による尿中ヘモグロビン測定法も開発し、きわめて高い臨床的有用性を見出した。また、最近健康保健項目として認められたトランスフェリンについても測定法を開発、従来から言われているような、糸球体障害のみならず尿細管障害も広く異常を検出できることを糖尿病症例も含めて新たに示した。尿中塩基性蛋白(BFP)は、新しい尿腫瘍マーカーとして注目をあつめているが、このBFPの基準範囲を設定、尿中での不安定性発見、さらに精漿にも多量に存在することを新たに見出した。 Protein1は肺胞洗浄液、尿中、精漿中に存在する低分子蛋白である。大腸菌に発現させたリコンビナントProtein1を用いて、PhospholipaseCも抑制する機能を新たに発見した。 尿中蛋白測定プロフイルは現在300ケース測定終了、明年度より基準範囲も設定して、具体的な解析を進め、本システム完成を導く予定である。
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