平成7年度の研究を通じて、我々は、血小板にアダプター蛋白SHC、Grb2さらに、転写因子Stat3およびStat5が存在することをはじめて明らかにした。しかも、トロンボポエチン刺激下でこれらの蛋白がチロシンりん酸化されることも明らかにした。これらの一連の仕事はいずれも正常細胞を用いたトロンボポエチン研究の嚆矢となるものである。SHCのチロシンりん酸化にともないGrb2との会合が認められ、血小板にもrasP21が存在するという最近の報告に鑑み、興味深い知見と考える。また、これらの蛋白チロシンりん酸化と同時に血小板の凝集の亢進が認められている。この凝集亢進は、ズリ応力、ADP、トロンビンなどのいずれの刺激下でも認められた。一方、トロンボポエチンはphospholipaseC活性化に伴うプロテインキナーゼCの活性化や細胞カルシウムイオン濃度の上昇を惹起しないので、蛋白チロシンりん酸化が直接に血小板凝集亢進に関与している可能性が示唆された。以上より本研究は目的主旨に沿って、過去に血小板に存在することが知られていなかった蛋白の新しい役割を明らかにしつつある。
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