研究概要 |
本研究は、還元型葉酸と酸化型葉酸のもとで各種葉酸拮抗剤耐性の細胞株を作製し、これら細胞で薬剤の標的遺伝子の構造変化を調べ、これが白血病細胞での耐性診断の指標となりうるかを明らかにすることを目的としている。平成7年度は、古典的葉酸拮抗剤のmethotrexate (MTX)またはN^<10>-propargyl-5, 8-dideazafolic acid (CB3717)を用いて、耐性診断のモデルとなる耐性細胞を作製した。還元型葉酸として、細胞培養中で安全性をもつ5-formyl tetrahydrofolate (LV)を生理的濃度10nMで用い、酸化型葉酸はRPMI1640培養液に含まれるpteroylutamic acid (PGA)を用いた。耐性細胞は白血病細胞株CCRF-CEMまたはMOLT-3を薬剤を含む培養液中で培養し、薬剤濃度を徐々に高くして作製した。作製した耐性細胞における耐性の程度を知るため抗腫瘍剤の殺細胞効果は、生細胞のミトコンドリア脱水素酵素活性を測定するMTT法にて行い、親株細胞と比較して評価した結果、PGA供給下に約60倍、約5000倍MTX耐性細胞が樹立された。LV供給下では約140倍、約1600倍MTX耐性細胞が樹立された。また、CB3717に対し、LVまたはPGA供給下に約200倍耐性細胞が樹立された。^3H標識MTXと細胞を接触させて、MTXの細胞内取り込みを調べた結果、PGA供給下に樹立されたMTX耐性細胞にてMTX膜輸送低下、LV供給下ではMTX蓄積の増加が認められた。研究評価として、白血病細胞での耐性分子機構の解明に必要な、MTXまたはCB3717に対する耐性度の異なる耐性細胞をPGAとLV供給下それぞれで樹立することに成功した。これら細胞は耐性の診断の貴重なモデルとなりうる。
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