血管内皮細胞(EC)の傷害の程度を採血により検出できる方法の確立が望まれているが、不十分な点も多い。最近、申請者等は、傷害血管内皮細胞が組織因子(TF)や第IXa、Xa因子受容体をその表面に持つ血小板大の小胞(SV)を放出することをフローサイトメト-(FCM)を用いて発見した。なお、従来はEC鏡面でのみ解析されていた。一方、動脈硬化などの傷害血管内皮に由来すると思われる活性化第XI因子(FXIa)は糖尿病や冠状動脈疾患などでその重症度と相関して増加することも明らかにした。本研究では凝固開始反応の中心的な物質であるTFを持ち、まったく新しい概念のSVの特質の解明と内皮細胞傷害マーカーとしての意義について基礎的および臨床的に研究し、TM、FXIaなどの新しいマーカーと比較し、その病態検査学的意義を明らかにすることが目的である。具体的な研究成果として1995年12月に掲載された論文(次頁参照)で、SV測定胞の基礎および遊離条件などその生化学的性質の一部を明らかにした。また、DICにおいてFCMで測定した患者血中のSVに発現するTF濃度がELSAで測定した血中TFやDIC重症度判定の最も重要なマーカーであるFDPと相関することを明らかにし、SVがDICの重症度を血管傷害の面から極めて良く反映すること、DIC患者で検出したTFの由来細胞を明らかにする目的で単球系のマーカーとtwo color analysisを行ったところ内皮細胞と単球の2種類の由来細胞があることを1995年の血液学会で発表した。また、培養血管内皮細胞およびDIC患者血中SVにはtissue factor pathway inhibitor(TFPI)が存在することも発見し血栓止血学会で報告した(これらの内容はBlood投稿準備中である)。今後SV形成とアポトーシスの関連などからSVの病態検査学的意義をさらに検討したい。
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