前年度に続き、その後発見された15例の新しい症例を含む遺伝性球状赤血球症患者(49例)を対象にして、末梢血単核細胞より抽出したDNAを用いてband3蛋白遺伝子を詳細に解析した。19のエキソンを解析するためプライマーを合成し、49例の患者についてそれぞれのエキソンをPCR法にて増幅後、SSCP法にて変異の有無をスクリーニングした。異常なSSCPパターンを呈し変異の存在が疑われる領域については、検出されるたびにDNAシークエンシングによって変異を同定し、また制限酵素を用いた解析により変異の存在を確認した。その結果、現在までに17種類の新しいband3蛋白遺伝子変異を見い出した。 これらのうち9つの変異はBand3蛋白の膜上への発現に異常をきたし、Band3減少症を来たすものと推定され、本症の発症に直接関与しているものと考えられた。他の8つの変異については、健常者にも同一の変異が確認され、polymorphismであると考えられた。Band3蛋白遺伝子異常は常染色体優性遺伝形式をとり、遺伝性球状赤血球症の約20%を占めることが明らかとなった。 次いで、band3遺伝子異常が認められなかった40例を対象としてankyrin蛋白遺伝子の解析に着手し、現在なお解析を進めている。当初の計画どうり概ね順調に研究が進行しており、現在までに5種類のankyrin遺伝子変異を発見している。今後これらの異常と病態との関連性について検討を進める予定である。
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