研究概要 |
【目的】精神分裂病の症状の悪化を未然に防ぐ方法として,精神症状の悪化が顕著に現れる前に,前駆的症状によって症状の悪化を事前に察知することが大切である。そのためこの研究では,定量的に測定可能な歩数の変化に着目した。歩数の変化と精神症状の変化との関連を調査し,前駆的症状として、歩数を測定することの有効性について検討した。 【対象と方法】対象は入院中の精神分裂病患者で調査の同意が得られた6名である。調査期間はケースによって異なり25週間から39週間である。 精神症状は主治医がPANSSを用いて評価した。陽性尺度の7症状,陰性尺度の7症状,総合精神病理尺度の16症状,及び陽性尺度合計得点,陰性尺度合計得点,総合精神病理尺度合計得点を症状の評価項目として用いた。 歩数と精神症状との関係を見るために,週の平均歩数と金曜日に測定した精神症状との相関関係を求め,同じ週に属する歩数と精神症状との関係を現在の歩数と精神症状との関係とした。さらに歩数の前駆的症状としての可能性を検討するために,1週間前,2週間前,3週間前,4週間前の歩数と精神症状との相関関係を調べ,1〜4週間前の歩数と精神症状との関係とした。 【結果】6名中5名に複数の精神症状と歩数に統計上の有意な関係が見られた。また歩数を1週間単位で先行させて病状との相関を見ると,1週間から4週間先行させても陽性尺度合計得点,陰性尺度合計得点,総合精神病理尺度合計得点のすべてあるいは一部に歩数と有意な正の相関が見られたのが4名であった。そのため患者によっては,歩数を測定することで,病状の変化の兆しをある程度前もって予測できることが想定された。 【結論】精神分裂病患者の中には,精神症状の変化と先行する歩数の変化が関係するものがいる。そのため看護婦(士)が精神分裂病患者の病状変化を予測する上で,歩数の変化を測定することが役立つ場合があるのではないかと考えられた。
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