研究概要 |
地域中核の医科大学附属病院の看護職が果たすべき役割を明らかにするために入院記録を基に患者の状況を調べた。平成6年度当院に入院した患者の延べ数は約2万人であり総合病院の診療領域の巾の広さのため患者の受けた医療は多岐に亘っていた。対象患者の年齢分布は小児を含めた若年者が5%,壮年者40%,老年者55%であった。看護活動の中で将来次第に需要が増加すると予測され,ケアの質を高める必要がある終末期ケアの状況を知るため平成6年度に当院で死亡退院した人々のケアの内容を看護記録を中心として調べた。対象の全数は220名であり,大多数が悪性腫瘍によって終末期を迎えた。死亡前の在院期間が1ケ月以上に亘った者はほぼ半数の128名,そのうち2か月以上は77名,3か月以上在院した終末期を当院で過ごした患者は51名であった。患者の年齢は4名が30歳未満であり30歳から64歳が21名,予想されるように65歳以上の高齢者が24名と半数以上であった。これらの人々の死亡1週間前の看護の状況を見ると大多数の患者が臥床しており頻回の観察を必要とする看護度A1に属した。これらの中には死亡1カ月前2カ月前さらに3カ月前もA1であった患者もありケアを提供する看護婦に多くの活動が要求されていることが明らかである。中でも疾患による疼痛を含む各種症状,薬剤による副作用,死を免れないのではないかという不安,気管切開など治療に伴う身体への侵襲によるコミュニケーション障害,自分の家に戻りたいという願い等は多くの患者に共通の問題であり,それに対応して巾広い看護活動が行われていた。しかし個々の患者について看護記録を詳細に調べると患者にとっては提供されたケアが必ずしも満足な結果のみでないことを伺わせた。ケアの質も保障できる方策を考えて行くために患者を直接にケアした看護婦を対象として次年度の研究を進める予定である。
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