前年度当大学病院で年間に終末期のケアを受けた患者の数は入院患者の3.2%にあたりそのうちの1/4は3か月以上在院した癌末期の患者であった。当院で終末期ケアにあたった看護婦の実践記録を基にこのような患者が自ら主体的に生の時間を過ごせる様な援助を高めていく可能性を探りながら何を改善して行けばよいか検討するため、いくつかの問題点を取り出した。 若い看護婦が積極的に終末期ケアに係わりその体験を基に次のケアに望もうとしている様子が窺えた。多くの患者が病名の告知、再発・転移の告知を受けておらずそれらの患者や家族のケアにあたり看護婦が苦心している事例が多かった。大学病院ゆえにより専門的に診療するにあたって病棟、担当医の変更がありいわゆる転科に伴う患者への充分な説明の必要はもとよりケアの継続性にたいする配慮が必要なことがあげられる。症状特に疼痛のコントロールについては時に充分な対応がなされておらず、患者の側からみれば最後まで納得できない肉体的な苦痛を持ったまま終末を過ごした事例もあった。経験の浅い看護婦に対しては看護スタッフの教育的係わりがなされており看護婦間のチームアプローチという点では配慮されている場合が多かった。病院という特殊な環境の中で患者が家族との親密な時間を過ごせるように不満足ながら工夫されていた。終末期の患者に一時的にせよ在宅療養を実現させるために看護婦が積極的に役場の保健婦と連携をとり病人を抱える不安にたいして援助の手をさしのべて成功している事例もあった。又重症患者が強く入浴を希望しているのに対して担当医の再三の不同意にも拘わらず看護婦の努力の結果その医師と共に何回かの入浴を実施できた報告もみられた。 以上実際の事例から今後取り組むべき問題が浮かび上がってきた。これを基に構成された質問紙の作成、調査を行い病院看護婦の総意として終末期ケアに対応するための方策を考えて行きたい。
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