研究概要 |
平成7年度は入院している被虐待児への看護ケア現状を把持することを目指した。大阪府下の小児病棟に勤務する1285名の看護職に,81項目からなる質問紙を作成し回答を求めた。回答数は1096(85.3%),有効回答数は1070(83.3%)であった。対象者の属性としては、小児看護経験年数,児童虐待への関心や知識,被虐待児のケア体験の有無などを求め,アセスメントへの枠組みとしては,子どもの入院生活・ケアの状況,子どもの問題,虐待の状況,親の生育歴・生活歴や社会的環境,活用できる会社的資源になど対する回答を間隔尺度で求めた。現在,集計分析の段階であるが,児童虐待への看護職の関心や被虐待児の入院は劇的に増加していた。私たちが7年前に行った調査に較べ,関心は70.4%から96.9%,ケア体験は29.2%から45.5%,看護教育での児童虐待の教育も17.8%から38.2%となっていた。さらに仮説通り,児童虐待への認知は依然として不十分で,ケアへの一致した視点も不足していた。ケア実践要綱をもつ病棟は3.6%に過ぎず,被虐待児が最も必要としているプライマリケアを彼らに必ずとっていたのは18.1%に過ぎなかった。親の被虐待歴や生活歴,妊娠経過の異常の有無,子どもの健康,計画出産か否か,親との分離体験などについては,80%異常の情報収集がなされ,看護計画も95.5%が立案し,身体や行動への観察も他の子どもよりも細かくするよう努力されていた。しかし,それらはケア内容に反映せず分断化し,包括的アセスメントにつながっていなかった。とくに,彼らが最も必要としている依存欲求へのケアの重要性に対する認識が乏しく,歴年齢でもって子どもの行動を評価し,問題を現象的に把握する傾向がみられた。さらにデータ解析を深め,彼らの示す問題行動や性格傾向が虐待的環境にある家庭への適応の結果であるとの分析視点につなげるアセスメント指標の開発への努力して行きたい。
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