昨年報告した高齢者家族ケアリング指標を用いて、老人病院に入院中の高齢患者の家族を対象に郵送調査を実施し、入院時と入院後の変化を測定した。家族ケアリング3因子の入院時から入院中の変化は、第1因子(情緒・行為援助)、第2因子(疎外)、第3因子(受容)3因子ともに入院時の値と相関が認められるがいづれも有意に低下し、なかでも家族の高齢者への疎外や否定的関与が入院後顕著に減少することが示された。第1因子は全体としては低下するが、行為的援助項目の低下とともに情緒的な援助項目の増加が認められた。入院中の家族ケアリング指標に関係する要因として、各因子を従属変数とした重回帰分析の結果、第1因子には面会時の対応、入院前の高齢者からの積極的関与が強く影響し、第2因子には痴呆と入院前の高齢者からの否定的関与、第3因子には面会時の対応、痴呆、移動能力が影響していた。従って、家族ケアリング指標は、入院前の機能を基盤として入院により明らかに低下する。しかし、疎外が最も減少することや、入院後情緒的支援の増加が認められることから、家族ケア機能の維持には入院の適切な活用が有効であることも示唆された。また、面会や外泊を通じて家族に高齢者との会話やケアへの参加を促す援助が情緒・行為援助や受容の低下を防止することに効果的と考える。 退院後の家族ケアリング指標の変化は、家族退院し在宅介護開始1ヶ月後の33名の家族について分析した。第1因子は入院時より退院後はやや高値となり、第2因子は入院時と入院中の中間値、第3因子は入院時とほぼ同様な値であった。退院後の情緒・行為的援助の増加は当然推測されるが、疎外や否定的関与は退院後再び増加し、高齢者と家族の介護関係は身近であるが故に反発も招きやすく、距離を置いたケアの工夫も必要である。また、受容因子は比較的変動幅が小さく状況変化も少ない、家族が長い過去の歴史を通じて築いてきた因子であることが伺われる。
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