研究概要 |
対象者と方法:出産予定が平成8年1月から平成8年9月までの妊婦で,妊娠10週〜分娩終了までの期間,継続的に研究協力の合意の得られた35名を対象とした。対象者には妊娠期間を通じて,産痛緩和を図るための分娩準備教育を行い,分娩前にはその習得度の評価を行った。分娩期は,陣痛間欠時の疼痛閾値の変動と陣痛時の産痛強度を子宮収縮力,頚管開大度との関係から検討し,併せて血中β-エンドルフィンの分泌を検討した。データは,35名の対象者のうち,21名のデータにより次の結果を得た。 産痛の定量化 1)産痛の定量的測定は,子宮収縮力に伴う疼痛閾値と産痛との関係を検討した結果,VASとWANG BAKER FACES法との高い相関が認められ,(r=0.721),(r=0.668),本研究では両者の測定法を採用した。 分娩準備教育の作用効果 1)妊娠期の痛覚閾値は,pain analyzer-NYT9002を使用し,熱による耐痛閾値と痛覚閾値を時間法と温度法により測定を行った結果,分娩に向かって上昇する傾向がある(n=20)。しかし,心理的な不安やストレスは痛覚閾値を下降させる傾向をもっている。 2)妊娠期に学習した産痛緩和法は,痛覚閾値の上昇に影響を与え,妊娠末期の痛覚閾値の上昇は,分娩期に産痛緩和法を活用した場合は,産痛閾値を下降させることは少ない。 3)痛覚閾値が下降しなかった群では(n=20),分娩期の子宮収縮力,頚管開大度に応じて,産痛感覚は強くなり,一方,妊娠末期に痛覚閾値が下降した者は,産痛感覚が子宮収縮力や頚管開大度に対応せず,分娩準備期の早期より産痛を強く訴える傾向があった。 疼痛閾値とβ-エンドルフィン 血中β-エンドルフィン値は,分娩時の疼痛閾値が下降した群では,産痛緩和法を効果的に行い下降しなかった群に比して,高値を示し,かつ準備期に急激に増量した。血中β-エンドルフィン値は疼痛閾値への関与を検討する必要が示唆された。
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