今年度は以下の二つの調査を実施し、分析を行った。 1)写真投影法を用いた児童の地域イメージの分析調査 弘前大学教育学部附属小学校5年生(男子50名、女子53名)に24枚撮りインスタントカメラを配布し、休日を利用して自宅周辺の「好きな場所」「嫌いな場所」、「気になる場所」を自由に撮影してもらう(撮影期間:平成7年11月21日〜26日) 2)認知心理学的手法を用いた、児童の景観評価構造の解明 レパートリーグリッド手法を用い、上記の写真を用いた児童の一人づつの対面調査を実施(約25分間)。ヒアリングの結果をもとに児童の景観評価構造の分析を行った(調査期間:平成7年12月1日〜19日) 好きな場所として撮影された空間は、「自然」「公園」「住宅周辺」「店舗」「公共施設」「建築」「構造物」の順に多く、その理由づけとしては「楽しい」「きれい」といった語が多く抽出されている。 本研究では、子供たちが身近な空間事象をどのように評価、認識しているかを浮き彫りにすることができた。対面調査によって子供から直接聞いて得られた知見も多く、個人の評価構造を解明するという意味におけるレパートリーグリッド手法の有効性が認められた。また調査を通じて、子供たちが自分の生活体験を活かしながら独自の視点で周囲の景観を評価している事実も明らかにすることができた。自分の住む街に目を向けるこの手法は、子供たちへの住環境教育の第一歩となるのみならず、都市計画においても有効に活用されるべきものであると考えられる。
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