野菜の加熱による硬化・軟化過程を速度式に基づいて数式化し、時間および温度依存性を明らかにした。試料はダイコン、ニンジン、ゴボウおよびジャガイモとした。次の2つを仮定して速度論的モデルをたてた。(1)ペクチンは加熱と共に3つの形(未変化ペクチン、硬化ペクチンおよび軟化ペクチン)に変化する。(2)3種のペクチンの各々が硬さに影響し、硬さはそれらの和で表せる。硬化の原因を酵素によるペクチンの脱メチル化、軟化の原因をペクチンのβ脱離として硬化、軟化および酵素失活に対して、それぞれ一次の速度式を適用した。各速度定数を対応する温度範囲における実験値を用いて最小自乗法により求めた。計算による硬さの値は実験値とよく一致した。本式により、硬化・軟化過程が同時に表現され、速度パラメーターによって適度な硬さに達するまでの最適加熱時間が算出された。硬化の速度定数は低温域(54-63℃)ではアレニウス型を、高温域(70-99.5℃)では非アレニウス型を示した。高温域では硬化の反応機構が複雑であることが示唆された。本研究で得られた硬さの定式化は野菜の調理加工における硬さの制御に有用な知見である。野菜を加熱前に高圧処理すると組織が硬くなり、加熱しすぎによる煮くずれを防止できる。このような軟化制御に対しても本研究における速度論的解析が有効であることを確認した。
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