快適な触感を得るためには、素材の表面特性、力学的性質、さらには材料を通しての熱、水分、空気の移動特性などが複合してかかわると考えられる。したがって素材から得られる物性値を解析し、感覚評価値との関係を調べることにより、快適性を考えた商品作りが可能になると思われる。そこで本研究では、まず、表面特性、圧縮特性に関する物性値の測定方法を検討し、得られた特性値を官能評価値との関係で考察し、触感にかかわる性能の客観評価方をみつける提案をおこなった。試料には、直接肌と接して使用される化粧用スポンジ、酵素処理をした綿の肌着素材、ランジェリー用素材を用いた。化粧用スポンジに関しては、直径の異なる球圧子を用いて、布とは異なるスポンジの新しい測定条件を見つけ、主観的な弾力性評価の定量化の指針を得た。表面特性についても、肌触り、なめらかさとの関係を調べ、圧縮弾性率、圧縮レジリエンス、厚さの平均偏差や凹凸のピッチ等の複合量と官能検査によってもとめたなめらかさの平均嗜好度との関係から、評価方法の基本線を得た。熱、水分の移動特性と触感との関係については、ランジェリー用素材を用いて、いくつかのシュミレーション試験を行った。すなわち、汗をかいた時に生じる布と皮膚との付着を考慮し、模擬皮膚と水分を含んだ布間の摩擦力の測定、夏の暑い環境条件下でランジェリーとブラウスとの重ね着を想定し、熱、水分が布を通して同時に移動する際の熱量の測定、水分移動速度の測定などである。そして、水分移動速度が重要なパラメターの1つであることがわかった。しかし、むれ感にかかわると考えられる布間、皮膚と布間で生じる過渡的な湿度変化や湿度、温度の触感への寄与の度合等については、本研究の期間内では解析にまでいたらなかったため、継続した研究が必要である。
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