本研究は、石川県に立地する戸建住宅、集合住宅の居住性及び地域性と住居観との関連性を探ることを目的とし、金沢市市街地立地の民間分譲集合住宅(以下『金沢』と表記)、金沢市郊外の計画的戸建住宅地(『松任』)、能登地方中都市既成市街地の戸建住宅(『羽咋』)の居住者を対象に調査を実施し、その結果を分析した。以下本研究で得られた特徴的な結果を示す。 (1)平面構成…『金沢』は和室1室、洋室2室の3LDK、『松任』は洋室3〜4室と和室1室の4〜5LDKが典型的である。『羽咋』は洋室1〜2室で残りが全て和室とDKのタイプが多いが、住宅面積はばらつきがある。 (2)住まい方…団らん、食事、夫婦・子どもの就寝、接客の部屋の取り方は、『金沢』『松任』『羽咋』それぞれの立地条件、平面構成、住宅形態により異なる傾向がみられる。『羽咋』はどの行為においても和室の使用が圧倒的に多いが、子供寝室に関しては洋室の割合も和室と同程度あり、子供室の洋室化は顕著であるといえる。 (3)居住性評価…『金沢』は住宅各部の狭さが最大の問題点である。『松任』は住宅に関しては収納スペース不足程度であるが、交通の便の悪さや生活・文化施設の不足が大きな不満点である。『羽咋』は収納スペース不足と台所の不満が挙げられ、全体として生活上、自然環境上満足が得られているものの、多様な社会断層の居住者が混在しているためか、近所づきあいに不満が多い。 (4)住居観…従来自宅内で行われていた冠婚葬祭は、『羽咋』の方が『松任』より自宅で行いたいとする世帯の割合が高いが、今後葬式や結婚披露宴は減少していくであろう。高齢期の住み方は『松任』は近居を理想とする世帯が『羽咋』より多いが、現実には完全同居か別居の割合が理想より高くなると感じている。
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