小麦粉・雑穀粉を用いた食品をつくる際に利用される自然発酵法(リンゴ浸漬水)によりEnterobacter GAOを分離した。この分離したE.cloacae GAOを用いて小麦粉発酵食品への応用を試みた結果、酵母に比べ冷凍、冷蔵、蒸し直しに強い長所をもち、酸産生の少ないものであり、動物実験による安全試験でも問題のないものであった。本研究は、今までの経過の上に立ち、本細菌を用いた食品の主としてたんぱく質の分解機構と分解産物のアレルゲン量を測定して低アレルゲン化を検討することと、今までに分離した微生物の分類の評価を行い、新しい小麦粉発酵食品の開発と、さらに世界各地の小麦粉発酵食品から微生物(細菌)の検索を行う事を目的とした。 今回の研究で 1.世界各地の伝統的な食品中の微生物の検索を引き続き行い、微生物の同定を行った結果、モンゴルの饅頭よりあらたにBacillus subtilis、Bacillus cereus等を分離した。 2.リンゴ浸漬水から分離したE.cloacae GAOを用いて製造したドウの製造工程中のたんぱく質の変化を、水抽出・透析を行い塩可溶性たんぱく質と塩不溶性たんぱく質に分画した。市販酵母を用いて饅頭を製造し、同様のたんぱく質分画を行い、作用機作の違いを電気泳導により検討した結果、明らか異なっていた。 3.たんぱく質の分解産物のアレルゲン量を測定して低アレルゲン化しているかを確認した。実際に種々の微生物を用いて製造した饅頭から抽出したたんぱく質をアレルギー患者の血清を用いて、IgE誘導の低下の有無をモデル的に検討した結果、市販酵母とは異なりE.cloacae GAO、Bacillus subtilisはその可能性を示すものであった。
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