摂取された食物繊維は糞の性状や栄養素の拡散状況等に影響を与え、結果として成人病予防に有効となる。とりわけ水溶性食物繊維にはその効果が大きいと言われる。筆者らはラットの小腸細胞表層にコンカナバリンA結合性糖タンパク質が存在し糞中に排泄されることを見いだし、それが摂取した飼料組成に影響を受けることを報告している。藻類は食物繊維に富む食品であり、水溶性食物繊維の含量も多い。そこで今回は藻類を試料としてその摂取と小腸表層の機能との関連をラットを用いて検討した。 藻類試料としてはわかめ・ひじき(褐藻類)、のり(紅藻類)、青のり(緑藻類)を用い、食物繊維として3%添加した飼料を調製し、飼育期間は7日間とした。小腸機能は糞中コンカナバリンA(Con A)結合性糖タンパク質の実験期間後半の糞中への排泄量(アフィニティークロマトグラフィーによる分離後定量)および小腸表層に局在する小腸スクラーゼ活性を実験終了時に測定し、指標として用いた。 試料として用いた藻類の総食物繊維量を酵素‐重量法により測定した結果、試料乾燥重量に対して40%から65%の含量で、水溶性食物繊維/不溶性食物繊維比はおおむね1:1であり、野菜など他の食物と比較して不溶性食物繊維の良い給源といえた。飼育期間中ラット各飼料群間の体重増加量に有意な差は見られなかった。しかし糞量はいずれの群においても食物繊維無添加群に比較して顕著に増加し、糞中のCon A結合性糖タンパク質量も糞量の増加とともに増加した。また、Con A結合性糖タンパク質画分のSDS‐PAGEによる泳動パターンには食物繊維添加による差は見られなかった。小腸スクラーゼ活性についても食物繊維の有無による差は見られず、小腸での栄養吸収機能に影響は見られなかった。従って、藻類食物繊維は小腸の機能を損なうことはないが、Con A結合性糖タンパク質の排泄を増加させることから、小腸表層細胞の代謝亢進を促す作用を有することが示唆された。
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