本年度は二つの調査を行った。一つは、阪神・淡路大震災地域での戸建て住宅地のコミュニティー形成に関する調査、今一つは京都市における古い戸建て型市営住宅地でのコミュニティー形成に関する調査である。前者は、いざという時のためにも常日頃からのコミュニティー形成が大切ではないか、という問題意識からであり、後者は長い共通の居住地体験がコミュニティー形成にプラスに働くのではないか、という問題意識からであった。 前者の調査からは、(1)9割近くの人が震災時に助け合っている。(2)震災後、親しく付き合う軒数が増えている。(3)しかし、親しく付き合うのは現状程度で良いとする人が多い。(4)一方、自治会等の地域活動は、より活発に、とする人は多く、具体的に環境を良くする活動をあげる人が多い。「強制的共同」の仕掛けが現在乏しい戸建て住宅地では、具体的に助け合う事態の体験が、コミュニティー形成に大きな役割を果たすが、なお理論的に言っても、それが必要、ということが心から広く認識されねばならないことが分かったのではなかろうか。後者の調査からは、(1)昭和26年入居からずっと住みつづけている人が8割以上で全体に高齢化が進んでいる。(2)自治会には全員加入し7割が役員を体験し、9割が必要としている。(3)自治会行事は、共同清掃、防火訓練、地蔵盆、秋の親睦会、子供会行事等があり参加率も高い。(4)集会所は、昭和46年に出来たもので活発に使われているが、現在色々な不満も出てきている。市営の戸建ての場合は、市に対して共同で交渉するという共同の契機が存在するとはいえ、時間的・歴史的経過がコミュニティー形成に重みを与えていることが分かった、と言える。
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