1.標準的な風合い測定に用いられているKESの測定系を用いて、従来用いられている特性値である平均摩擦係数や平均偏差を得るだけでなく、センサの出力信号をフーリエ変換することにより、摩擦力の変動成分の周波数分析を行った結果、各々の試料に特徴的なスペクトルパターンが得られると同時に手触り感との間に密接な関係が認められ、手触り感評価の指標として有効であることが推定された。摩擦力の変動成分は、布帛の織密度に対応した成分と摩擦子のライン配列のピッチに対応した成分、及びそれらの高調波成分からなっていることが明らかとなった。また織り密度に対応した成分は、布表面の凹凸のランダム性が増大すると小さくなり、逆に摩擦子のピッチに対応した成分は大きくなることも明らかになった。 2.さらに帛布の物理測定において摩擦感に関して多くの情報を得るために、摩擦子の移動速度、静摩擦加重をパラメータとして動摩擦係数の時系列データが測定可能な測定装置を試作した。摩擦子の移動は、パルスモータで駆動できるXステージを用いてパルス速度を変化させることにより移動速度を制御する方式とした。作製した測定装置を用い、摩擦子の移動速度を0.5〜20mm/sec、静摩擦加重を5〜50gfの範囲で変化させ、新合繊布試料の測定を行った結果、パラメータの変化に対し、個々の試料に特徴的なスペクトルパターンの変化がみられた。これらの変化パターンは、試料布の織構造や糸および糸を構成している繊維の構造を反映しており、新合繊布の微妙な手触り感の差別化を物理測定によって行うための手がかりが得られたものと考える。
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