本研究で提案している時定数理論による新しい布の保温性評価法について、その妥当性を実験により検討した。本年度(平成7年度)は、実験条件として設定すべき要因の検討を行った。本実験では、人為的誤差を排除するため、熱電対、データロガーとパソコンによる温度の自動計測、さらには自動撹拌機による攪拌を行っている。成果は次の通りである。1.布の熱伝導率と保温率の測定、並びに布の表面熱伝達率の測定ができ、布の保温性や伝熱性の評価ができることを確認した。ただし、布の種別による差異を見いだすことは難しい。2.5%程度の誤差範囲で測定が可能である。3.数種のジュース缶の調査において、表面熱放射特性には差がほとんど認められない。また、黒の艶消し塗料あるいは白色塗料の塗布も同様の表面熱放射特性を示す。これらのことから、熱源体には市販のジュース缶の利用が可能である。4.熱源体表面を一様温度とするには、90%以上の湯量が必要である。4.時定数に温度依存性が認められる。したがって、降下温度の範囲は大きくとれず、5℃程度にとどめる必要がある。なお、言い換えると時定数の温度依存性が計測できる。以上から、本評価法を有効に適用するには、熱源体として市販のジュースの空き缶を用い、およそ、90%の湯量で加温し、降下温度の範囲は5℃程度に設定すべきである、ということが分かった。平成8年度は学生実験への適用を検討する。実験器具として、棒状温度計とジュースの空き缶及びストップウォッチ等の簡単な道具を用いて、平成7年度で得られた条件設定の有効性について学生をモニターとして検討し、よりよい条件設定の確立を行う。
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