研究概要 |
フラボノイドの生体内抗酸化性を検討するために,まず,マウスおよびヒトの血しょう中のフラボノイド濃度を測定するHPLC法を確立し,血中動態を明かにした.そして,生体内でフリーラジカルを生成する鉄ニトリロ酢酸(Fe-NTA)によるマウス腎発癌モデルを利用して,フラボノイドの腎組織中の脂質過酸化および腎近位尿細管細胞の形態的変化,亜急性毒性に対する影響を調べた. 水に難溶性のルテオリンやリチンとグルコースを酵素反応により付加したα-G-ルチンの血中動態を比較したところ,ルテオリンやルチンは投与6時間後に血中濃度が最大となり,徐々に吸収されたが,α-G-ルチンは30分後に最大となりその後速やかに血中より消失し,吸収が非常に早いことがわかった.そこで,一過的に血中濃度が高まるαG-ルチンを用いる方が生体内における作用機序を解析しやすいと考え,本フラボノイドを用いて以下の実験を行なった.Fenton試薬(Fe^<2+>/H_2O_2)およびFe-NTA/H_2O_2を用いてリノール酸メチルの過酸化試験を行い,α-G-ルチンがルテオリンより弱いものの抗酸化性を示すことを確認した.Fe-NTAをマウスに腹腔内投与すると1時間後に腎組織中の脂質過酸化度(TBARS)が最大となるが,α-G-ルチンをFe-NTA投与30分後に経口投与すると,有意に脂質過酸化が抑制された.Fe-NTA投与30分前あるいは投与1時間後にα-G-ルチンを投与しても有意な抑制作用は見られず,脂質過酸化の抑制とα-G-ルチンの血中レベルが相関することが示唆された.また,Fe-NTA連続投与を行なうと異型細胞が出現するが、α-G-ルチン経口投与により出現頻度が減少することもわかった.一方,ESRスピントラッピング法によりラジカル消去作用を,UV吸収により鉄イオンとのキレート作用をα-G-ルチンが有することを確認した.これらの結果は投与されたα-G-ルチンがマウス生体内で,レキ-ト作用あるいはラジカル捕捉作用によりFe-NTAにより腎組織中で生じたラジカルを消去して抗酸化性を発揮していることを示唆するものであった.
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