茶成分中に含まれる各種茶ポリフェノールにうちエピガロカテキン(EGC)が強い抗癌作用を持つこと、またその作用メカニズムにポリアミン代謝が関与する事を明らかにした。さらに詳細な作用メカニズムを調べるために癌遺伝子および細胞内シグナル伝達に及ぼす影響について検討した結果、癌遺伝子の一種であるc-fosの発現に影響を及ぼすことがわかった。また、シグナル伝達のうち細胞の増殖と密接に関連しているタンパクのチロシン残基のリン酸化について調べたところ、茶ポリフェノールはタンパクのチロシン残基のリン酸化、特に分子量4.2万と4.5万ダルトンのタンパクが特異的にリン酸化されることがわかった。これらのタンパクがどのような機能をもつかは今後の検討課題である。茶ポリフェノールが癌遺伝子やチロシンのリン酸化に影響を及ぼすという知見は新しいものであり茶の抗癌作用の解明に重要な手がかりを与えるものと考える。次に細胞内メッセンジャーとしての役割を持つ一酸化窒素との関係について検討した。一酸化窒素は生体内において血圧の上昇を抑制する血管内皮細胞由来の弛緩因子として発見され、その後血小板凝集阻害、マクロファージや好中球の細胞毒性などいろいろな役割を果たしていることが明らかにされている。本研究では一酸化窒素のこれらの生理作用が茶成分の生理作用との関連について検討した。その結果一酸化窒素生成量と抗癌作用との間に相関関係が認められ、お茶のいくつかの生理作用への一酸化窒素の関与が示唆された。さらに、本研究ではお茶の新たな生理作用を見出すために初代培養肝細胞を用い茶成分による肝細胞傷害の保護作用について調べた。その結果、エピガロカテキン(EGC)とエピガロカテキンガレート(EGCG)の2種のポリフェノールに強い保護作用が認められることがわかった。この保護作用に肝細胞のタンパクチオール基の茶成分による保護が関与していることを明らかにした。
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