人体の足部などについての基本的熱特性を把握するため、医学文献を中心に熱伝導率、熱容量、表面熱伝達率などを収集するとともに、これらの値を実験的に見出すための測定も併せて行った結果、大まかな数値を同定した。さらに、従来の文献に見られる低温やけど発生の伝熱モデルをとりあげ、このモデルが現実と異なる結果を招くこと、その原因は人体の熱産生の分布設定と代謝散熱の放熱不良にあることを理論的考察から突き止めた。 つぎに、人体足部の熱特性とほぼ同一の材料が入手困難であったことから、シリコン樹脂を用いて、人の足部位に似せた模擬足を作成し、数値的な変換を経ることで、基本的に熱特性を模擬できることを確認した。なお、この模擬足は、内部温度の時系列推移、最も注目している足部裏面の床との接触温度などを詳細に計測するため、模擬足内部に数十本の熱電対も埋め込まれている。 実際の被験者と先の模擬足を用いて、接触温冷感実験を行った。目的にもあるように、接触温度の推定が重要となることから、表面温度が同一でも、床材の熱特性が異なるだけで、接触温冷感が異なることを見出す確認を行った。 もしこの実験結果が正しければ、現在行われている表面温度による基準値の提案は見直されるべきであり、本研究がめざす接触温度による基準値提案の正当性が示されることとなる。
|