キサンタンガムは微生物が生産する多糖類であり、その水溶液は低濃度で高粘性、チキソトロピーの性質を示し、広く増粘安定剤として用いられている。近年、大豆油に対して酸化を抑制することが明らかとなった。この研究においては、キサンタンガムの分子構造に由来する物理・化学的特性の両面から抗酸化機構についての検討をおこなった。 1.キサンタンガム>ペクチン>グア-ガム≧トラガントガムの順で溶存酸素の減少が抑えられ、キサンタンガムが最も強い抗酸化力を示した。キサンタンガムはpH4〜6において多の多糖に比べて強い鉄結合能を保持していた。多糖の鉄結合能は溶存酸素減少速度すなわち抗酸化能と対応した。鉄結合能のないグア-ガムの濃度(粘度)と溶存酸素減少速度の関係を調べたところ、粘度が上昇するにつれて溶存酸素の減少が抑えられたが、同粘度のキサンタンガムに比べて抗酸化力は弱かった。エマルションの粒子サイズと抗酸化性との関係は認められなかった。 2.キサンタンガムはTrichoderma viride由来のセルラーゼにより最も低粘度化され、また脱アセチル化サキンタンガムはさらに低粘度化した。分子量分布を測定すると、脱アセチル化キサンタンガムの方がより低分子化していた。両低分子化キサンタンガムはピルビン酸残基が減少せず、Fe^<2+>結合能を保持し、そのキレート能(解離定数、最大結合数)も変化が認められなかった。低分子化キサンタンガムは未処理のキサンタンガムと同程度の抗酸化力を保持し、強い抗酸化性を示した。低粘性(低分子化)のキサンタンガムにおいても抗酸化機能を保持することから、キサンタンガムの強い抗酸化能はまず第一に高いキレート能による金属不活性作用によるものであり、付加的に高い粘性も抗酸化に寄与していることが明らかとなった。
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