研究概要 |
乳幼児期における思いやりの発達過程を明らかにするために,生後57日目から産休明け保育所に入園し,以後,保育所保育の委託を受けている男女児1名ずつの個体追跡を行い,現在,両名ともに4歳児クラスに在籍している。今回の整理においては,毎月1回の観察記録及びビデオ録画の資料のうち,0歳児,1歳児クラス,すなわち2歳9カ月までの資料を分析した。その結果を以下に示す. 1)前年度においては,0歳児は保育者に「受容される体験」が基盤となり,「情緒の安定」を得ることによる自己受容(情緒を素直に表現する)の重要性を確認した。引き続き,本年度では情緒の安定をはかる保育者の働きかけを,(1)子どもの快感情を受容し,喜びを共有する,(2)保育者が快的状態を作って乳児とそれを共有することから整理したとき,これらの働きかけは約2歳頃を契機として働きかけに質的変化がみられた. 2)快感情や不快感情を保育者によって「受容される体験」は,子どもの自発活動を促し,「自己活動」や「愛着行動」といて発現する.保育者への愛着行動は,特定の保育者に認められて欲しいという表現を通して求められるが,対象児両名の発達過程は,それぞれの特徴と発達速度を示しており,そこには対象児たちのもつ背景要因が大きく関与している。 しかし両名ともに,愛着関係の成立は,「居場所の確立」「活動の集中性」に有効に作用した. 3)さらに,保育者との愛着が成立することと並行して,「子ども-子ども関係」が広がっていくことが明らかとなり,今後の方向性が示唆された.
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