綿ブロード(綿)繊維に難燃性モノマーとしてビニルホスホナ-トオリゴマー(Fyro176)を用い、パッド・スチーム法を応用した後加工により難燃化を行い、処理繊維の燃焼時に発生するガスを分析した。分析はキューリ-ポイントパイロライザーをガスクロマトグラフィーに接続させて行なった。熱分解温度は590℃とした。難燃性モノマーとして、Fyrol 76、N-メチロールアクリルアミド(NMA)を、開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)を用い、モノマーを単独あるいは混合させてグラフト重合させた。グラフト率は重量法により求め、P量は(燃焼フラスコ法+リンバナドモリブデン酸法)、N量はケルダール法により求めた。燃焼性は酸素指数式燃焼試験機により求めた。 綿の燃焼時に発生するガスは、エチレン、エタン、プロピレン、メタノール、アセトアルデヒド、ブタジエン、ブテン、ギ酸、アクロレイン、アセトン、フラン、メチルエチルケトン、酢酸、ヒドロキシアセトアルデヒド、メチルプロペナル、メチルビニルケトン、メチルフラン、ジアセチル、エチレングリコール、アセトール、ブテナル、ベンゼン、ジメチルフラン、(2H)フラン-3-イン、ピルビン酸メチル、フラフラール、ペンタジナル、アセチルフラン、メチルフルフラール、フェノール、5-ヒドロキシ-2-フルアルデヒド、レボグルコサノンやアンゲリカラクトンなどの無水糖などであった。NMAで処理すると、新たにN成分に由来するシアン化水素、アセトニトリル、アクリルニトリルの生成が認められた。また、Fyrol76及びNMA処理により3-ペンテン-1-インは新たに生成するが、逆にピビン酸メチルの生成は抑制された。熱分解パイログラム上のピーク面積をそのガスの発生量と仮定すると、処理によりガス総発生量は約1/2に減少した。このことから、難燃処理によりガスの発生量を抑制できることがあきらかとなった。
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