綿、毛及び絹繊維の燃焼時に発生するガスを熱分解ガスクロマトグラフィー(Py-GC)及び熱分解ガスクロマトグラフィー=マススペクトロメトリー(Py-GC-MS)で分析した。熱分解温度は、綿及びポリエステルでは590℃、絹及び毛では764℃としたセルロースの燃焼性に関与するレボグルコサンは、未処理綿繊維のPy-GCクロマトグラムにその生成が認められた。リン化合物などで難燃処理すると、このレボグルコサンの生成量は減少し、熱分解ガスの総生成量も減少した。未処理綿と難燃処理綿の熱重量分析を比較検討すると、難燃処理綿の炭化残渣量の方が多い。Py-GC分析の結果と難燃効果とは一致する傾向が認められる。 絹、毛繊維の熱分解生成物には、N成分に由来するシアン化水素、アセトニトリル、アクリロニトリルなどの生成が認められる。また、毛繊維ではS成分に由来する硫化水素、硫化カルボニル、メチルメルカプタン、プロピルメルカプタンなどの生成が認められた。臭素やN-ブロモコハク酸イミドで処理した毛、絹繊維の熱分解ガスを分析すると、ブロモメタン、ブロモエタン、ブロモフェノール、ブロモクレゾールなどのブロム化合物の生成が認められた。この場合もブロム化により熱分解ガスの総生成量は減少傾向を示した。熱分解ガスをPy-GCやPy-GC-MSを用いて分析することは、繊維の化学修飾による構造変化や難燃性の評価に有効であることが実証された。
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