研究概要 |
近年、食物繊維への関心が高まり様々な研究が進められているが、海藻の生理機能への有用性も注目されている。ワカメの成実葉であり、粘性が大であるという特徴をもつメカブについてその成分特性と生理作用について検討を行った。 1.メカブ粘性物質の物性について、調理条件と粘度の関連から検討した結果、撹拌温度が高いほど粘度が増加した。また粘性物質中に溶出するアルギン酸量も粘度とともに増加していた。 2.メカブに含まれるアルギン酸の腸内発酵性について、ブタ盲腸内容物を利用したバッチ培養法を用い、炭酸ガス発生量や短鎖脂肪酸産成量から調べた。メカブ抽出アルギン酸ナトリウムを基質とした場合、炭酸ガスの発生は発酵12時間以降と遅く、短鎖脂肪酸はほとんど産成されなかった。これよりメカブ抽出アルギン酸ナトリウムは腸内細菌による発酵をうけにくい食物繊維であると考えられた。またこれらの発酵性はアルギン酸を構成するマンヌロン酸とグルロン酸の構成比によって異なることが示唆された。これらの結果は、J. Nutr. Sci. Vitaminol., vol.41の報告した。 3.メカブより抽出したアルギン酸ナトリウムの摂取が血漿コレステロール濃度、消化管組織や内容物に与える影響についてラットを用いた動物実験により検討したところ、摂取4週目で血漿コレステロール低下作用が認められた。また5週後に解剖を行った結果、小腸、盲腸組織重量や盲腸内容物の水分量に有意な変化が見られた。これらの結果と比較して、粘度の低い標準アルギン酸ナトリイウムを摂取したラットでは、小腸、盲腸組織重量の変化が小さく、アルギン酸ナトリウムの粘度がその生理作用に影響することが示唆された。これらの結果は、The Second International Conference on Nutrition and Aging において発表し、Food Sci. Technol., Int. に投稿、印刷中である。
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