研究概要 |
ワカメの成実葉であるメカブは、葉状体にはない粘りを持ち、この粘りにはアルギン酸などの食物繊維が含まれると考えられる。近年、食物繊維は様々な生理作用を持つ食品成分として注目されている。メカブの粘性特性と生理作用の関連について検討を行った。 1.メカブ粘性物質の粘度とアルギン酸含量はワカメ、コンブに比べ有意に高く、メカブのアルギン酸は撹拌により溶出しやすく、粘性物質の粘度の高さの要因となっていることが示唆された。また、撹拌温度が高いほど溶出するアルギン酸が増加し、粘度の高いメカブ粘性物質が得られた。メカブより抽出したアルギン酸Naの粘度はワカメより低く、メカブ粘性物質の粘度の高さはメカブに含まれるアルギン酸の粘度ではなく、溶出量の影響が大きいと考えられた。 2.メカブ抽出アルギン酸Naと粘性物質の腸内発酵性について、ブタ盲腸内容物を利用したパッチ培養法により調べた結果、メカブ、ワカメ、コングから抽出したアルギン酸Na、粘性物質からの短鎖脂肪酸産生量に違いはみられなかった。マンヌロン酸とグルロン酸の構成比(M/G比)の異なるメカブ抽出アルギン酸Naからのガス発生量は、M/G比が小さいほど多かったが、発生開始までに12時間以上要し、短鎖脂肪酸産生量も少ないことから、アルギン酸は腸内細菌による発酵をうけにくい食物繊維であると考えられた。この結果は、J.Nutr.Sci.Vitaminol., vol.41に報告した。 3.ラットを用いた動物実験により血中コレステロール濃度、消化管組織に与える影響について検討した結果、アルギン酸Naの摂取では血中コレステロール低下作用が認められた。アルギン酸Na、粘性物質、メカブのいずれの摂取においても、盲腸内容物の保水性が高まる傾向が認められた。この結果はFood Sci.Technol.,Int.に報告した。
|