本研究は、細胞外液のイオン環境変化、とくにマグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)イオンが血液平滑筋の収縮能や細胞内Ca動態に与える影響を明らかにすることを目的とした。 1.Mg欠乏食飼育ラットについて 生後4〜5週令の雄性WKYまたは高血圧自然発症ラット(SHR)に低Mg食を2〜3週間投与しMg欠乏ラットを作成した。WKYならびにSHRのMg欠乏群の血清Mg濃度は、それぞれの対照群に比し有意に低値を示した。また、血清Mg濃度と血清Ca濃度は有意に負の相関関係を示した。 2.血管平滑筋の細胞内Ca動態と収縮能について ラット胸部大動脈より摘出した血管標本を用いて微小血管条片を作成し、Ca指示蛍光色素FuraPE3を負荷し、細胞内Ca濃度変化と張力変化を同時測定した。 (1)血管平滑筋の反応性について 細胞外液にCaが存在する場合、WKYのMg欠乏群ではノルエピネフリン(NE)刺激よる細胞内Ca濃度上昇ならびに張力上昇が対照群のそれに比し有意に高値を示したが、無Ca溶液中ではNE刺激やカフェイン(Caf)刺激による反応性には有意な差を認めなかった。SHRにおいては細胞外液中のCaの有無に関わらず、Mg欠乏群と対照群との間にはNE刺激やCaf刺激に対する血管の反応性に有意な差は認められなかった。SHRの非刺激時におけるCa濃度はWKYに比し有意に高値を示した。 (2)血管内皮の機能について 血管内皮機能を検討するためにあらかじめNEで刺激した血管条片にアセチルコリンを投与し血管弛緩の程度をMg欠乏群と対照群で比較検討したが、WKYならびにSHRのそれぞれの両群間には有意な差は認められなかった。
|