1.セロファトカルシン分子型の大量精製:セルファロカルシンはV-IX綱の脊椎動物の中枢神経系において普遍的にクラスター構造をとることが明らかとなり、精製材料の選択範囲が大きく広がった。調達の利便性をもとにウシ脳を採用した結果、陰イオン交換体DEAE-セファセル・ResourceQからのCaによる選択的溶出法で、ラットやマウスの蛋白質に酷似の特性を示すクラスターが10mgのオーダーで取れた。分子型の単離に関しては、二つの主要な型I・IIがHPLCを用いた陰イオン交換あるいは逆相クロマトで純品として得られている。 2.セファロカルシン分子型のドメイン構造・一次構造の決定:ペプチドマッピングで分子型I・IIは全般によく似ているが、差異を示すペプチド断片も検出され、一次構造ないしは翻訳後修飾の違いが推定される。現在、ペプチド断片のシーケンスを進めている。なお、分子型の違いがN末端の修飾の有無や-SHの存在態様の違いによる可能性は否定的である。 3.セファロカルシン分子型に対する特異抗体の作成:ウシ脳から精製したクラスターでウサギを免役して特異抗体を得た。高力価で、ラットやマウスのセファロカルシンと交差し、また各分子型と均等に反応するなどの特性を示し、下記4の目的によく適う。 4.セファロカルシン分子型の高感度分別定量法の確立:上記3の抗体・化学発光試薬をイムノブロッティングに用い、電気泳動の分離能を高めた結果、100倍以上高感度となり、ラット脳局所のパンチアウト試料(1mmφ×1mm)からの分子型の微量検出が可能となった。現在、ラット脳より得たクラスターを標準に、画像データをもとに定量化を進めている。 以上、概ね当初の計画通りの研究実績が得られた。さらに、本年度の研究過程で、新規性が推定される45kのCa結合蛋白質のクラスターがウシ脳より見出され、中枢神経系におけるCa結合蛋白質の分子多様性は一般現象である可能性も推定される。
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