(1)セファロカルシン分子型のドメイン構造・一次構造の決定:ウシ脳より精製した5種以上の分子型からなるセファロカルシンのクラスターを還元アルキル化した後、Resource Qカラムクロマトグラフィーにより主要な分子型二つを得た。両者のペプチドマップは殆どがオーバーラップするが、相互に異なる断片一つが検出された。現在、これらの知見をもとにアミノ酸配列の分析が進行中で、その決定によりセファロカルシンの分子多様性の機構の一端が明らかになると考えられる。 (2)セファロカルシンのラット中枢神経系における分布・細胞株における発現・分子型の存在比と栄養状態・生理機能・神経機能擾乱時における変化:前年度の研究で得られた高力価の抗ウシセファロカルシン抗体が威力を発揮した。本抗体はラットやニワトリの蛋白質と強く交差し、中枢神経系局所微量試料のイムノブロッティングによる分析を可能とした。ラットにおける分子型の分布パターンは、中枢神経系の部位により異なることが確定した。さらに、亜鉛欠乏状態からの回復過程において24時間以内にセファロカルシンレベル(比活性)の復帰傾向が認められた。また、ニワトリ胚の発達過程においても分子型ごとに発現パターンに差のあることが、網膜や小脳で見いだされた。これらの知見は、セファロカルシンがハウスキーパ-的な素子であるよりは、神経機能の調節役として機能する可能性、及び分子多様性の存在に生理的な意義のあることを強く示唆する。 (3)セファロカルシンの生理的有機リガンド・標的分子の探索:セファロカルシンがCa^<2+>と異なる部位にZn^<2+>を結合し、更に疎水性蛍光プローブ(アニリノナフタレンスルホン酸)やフェニルセファーロース等と結合することを手掛かりに継続的に検討しているが、現時点では生理的有機リガンドや標的分子の存在は不明である。一次構造の決定が本探索への有力情報を与えると期待される。
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