研究概要 |
【目的】血清Lp(a)値の家族集積状況とLp(a)フェノタイプの関わりについて検討した。 【対象と方法】Lp(a)値は、‐80℃に凍結保存した学童とその両親(55家族)の残余血清を溶解させ、COBAS MIRA‐S(日本ロッシュ)を用い、ラッテックス凝集比濁法(LIA法:三和化学研究所製)により測定した。Lp(a)フェノタイプの判定はSDS‐PAGE電気泳動法及び免疫学的手法により実施した(三和化学研究所製:Lp(a)左1タイプ分析キット)。尚、フェノタイプの分類は、、apoB‐100より速く泳動されるもの(F type),同じもの(B type),遅いものをS1,S2,S3,S4type、検出感度以下のものを0(null)typeとした(Uterman,阿部らの基準)。更に、Ib Christian Klausenらの分類法に基づいて、I,II,III,IV,nullの5群に分けた。統計学的検討にはFisherの直接確率法を用いた。 【結果並びに考案】統計学的検討は、Lp(a)値が正規分布していなかったため、自然対数に変換した値で行った。子,父親,母親のLp(a)値(最小,最大値)は各々、12.6±7.2(3.7〜40.9)mg/dl,14.9±10.6(3.8〜52.2)mg/dl,14.2±13.5(3.0〜91.6)mg/dlであった。子(男,女別を含む),父,母のLp(a)値に有意な差はなかった。Lp(a)値の家族内集積状況をみるため、子,父,母のLp(a)値(自然対数変換値)の相関係数を求めたところ、父対子はr=0.26(p<0.1),母対子はr=0.37(p<0.01),両親間はr=‐0.26(p<0.1)であった。両親間の関係については今後、更に検討する歩強うがあろうが、遺伝的関係のある親子間で正の相関が認められたことから、Lp(a)値の親子間の相関に遺伝要因の関与が推測された。次いで、子,父,母におけるLp(a)の高値者(≧25.0mg/dl)の出現割合について調べたところ、各々、5名(9.1%),7名(12.7%),6名(10.9%)であり、両親における高値者の陽性率は子の同陽性率に比べ有意に高かった。更に、Lp(a)高値者の家族内集積状況を知るため、両親のいずれかが高値の群(n=12)と正常値の群(n=43)に分類し、両群における子の高値者の出現率について検討した。その結果、高値群では4名(33.3%)であり、正常群の0名(0.0%)に比べ、有意に高値の子の出現率が高かった。高値者のフェノタイプの分類は、子(n=5:I=1名,II=3名,III=1名),父(n=7:I=3名,II=1名、III=3名),母(n=6:I=1名,II=3名,III=2名)であり、分子量の小さいもの(クリングル数<23)の保有割合は、子,父,母各々、80.0%,57.1%,66.7%であった。以上の結果から、Lp(a)高値の出現に分子量の小さいフェノタイプの関与が示唆された。 【結語】Lp(a)値は親子間で正の相関が認められたことから、Lp(a)値の親子の集積に遺伝要因の関与が示唆された。また、Lp(a)高値の出現には小さい分子量のフェノタイプが関与していた。
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