ゴマ種子は粒状、粉状そしてペースト状と磨砕によってその性状が著しく変化する。これらの変化を科学的に定量化することを試み、ゴマ種子の調理性を明らかにすることを目的とした。 まず、炒りゴマの調製条件を検討し、生理活性成分であるリグナン類および総食物繊維、さらに呈味成分として遊離糖と遊離アミノ酸を定量し、官能検査を実施した。170℃、200℃および230℃で1分から20分焙煎したゴマを試料とし、多くの成分は炒り条件が過酷になるほど減少し、170℃で15分という比較的緩慢な焙煎によるゴマが官能的にも評価が高かった。 次に、170℃15分焙煎の炒りゴマを試料として磨砕による変化を検討した。磨砕は電動擂潰機(石川播磨製16号を改良)を使用し、すりこぎを40回/分で回転させた。ゴマ種子の使用量が多くなるほど、磨砕を遅れる傾向にあった。今回は1回あたり50gを使用し、磨砕時間を1分、3分、5分、7.5分および10分とした。磨砕後1分のゴマはさらさらした粒の多い状態で、3分後には粒は認められずにしめった状態を呈するようになった。5分後にはさらに均一になり、ねっとりさが増した。10分後に肉眼的には均一なペースト状になった。これらの状態変化は、ろ紙に吸着させた遊離油量およびクリープメータ(山電RE-3305)で測定した付着性によると、比較的容易に数値化できることが明らかになった。磨砕したゴマを脱脂し、ふるい分けあるいは画像解析による粒度分布からも磨砕程度がわかり、5分以上の磨砕で細粉が増加した。画像解析からは磨砕するほど、ゴマの形状として凹凸がなくなることが認められた。走査型電子顕微鏡によれば、磨砕3分までは鮮明な立体画像が残り、ゴマ種子の細胞組織が残っていることが考えられた。その後次第に像が不鮮明になり平面化することが観察できた。 さらにゴマ種子の調理適性については、日本に特有の調理であると思われるゴマあえには、3分磨砕したゴマが、たれやソース類としてさらに磨砕したペースト状のゴマが嗜好された。
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