研究概要 |
当初の研究計画に沿って,アポロニオス『円錐曲線論』(第1巻から第4巻)について個々の議論で利用される命題,前提を特定する作業を行なった.すでに昨年度にアルキメデスの主要著作について同種の作業を終えているので,ほぼ問題なく作業が進行した. 『円垂直線論』は議論のテーマが限られており,面積の相等,不等と比例関係の変形が議論の大半を占める.テクストは整っており,主要な定理は決まった術語により導入されるので作業は比較的容易であった. エウクレイデス『原論』の命題の範囲を越える定理を前提とした議論もいくつか発見された.『円錐曲線論』第2巻命題52における比の不等に関する議論はその典型である. 2年間にわたる研究(および平成5年度のパッポス『数学集成』に関する研究)によって,ギリシア数学の論証における定理や前提の利用礼を相当数集めることができた.最終年度である次年度は,この結果を分類整理し,研究者に利用しやすい形で公表することになる. これまでの分析の結果,最終的なデータベースには命題番号だけでなく,その命題を導入する際に用いられる定型的な術語(『原論』5-17ならばdielonti,5-18ならばsynthenti等)を含めることが有益であることが分った.また,これらの術語の中世,近代における種々の訳語も与えることによって,古代数学史の研究者だけでなく,中世以降の数学史の研究者に役立てることも検討している.
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