研究概要 |
ギリシアの数学者が実際に数学的探求に用いていた命題や前提を知るために,ギリシア幾何学の代表的な数学文献であるアポロニオス『円錐曲線論』,アルキメデス『球と円柱について』,『円錐状体と球状体について』,『螺線について』を分析し,そこで用いられている基本的命題すべてを数えあげ,分類し,索引化した. 索引は第1部:利用される命題の一覧,第2部:利用される命題ごとの利用箇所一覧,第3部:テクストの順序にしたがった利用命題一覧,の3部分から成り,特定の基本的命題がどこで利用されているかを知りたい場合は第1部および第2部を,逆にアルキメデスやアポロニオスの特定の命題中でどの命題が利用されているかを知りたい場合は第3部を参照することになる.特に第3部はテクストの読解に困難を感じる初学者にも有益である.さらに同じ基本的命題を用いる箇所を比較することによって,著者による文体の相違や後世の挿入箇所を特定することも期待でき,今後の研究の基礎資料として役立つと思われる. 索引はコンピュータ上のほうが利用しやすいので,『円錐曲線論』に関する部分のみを印刷し,全体をhttp://wwwhs.cias.osakafu-u.ac.jp/ksaito/にて公開した。 本研究によってギリシア数学で用いられた幾何学上の定理,比例論の定理のほぼ全部を網羅し,分類することができ,ギリシア数学の高度な議論ががかなり少数の基本的な議論の道具によって組み立てられていることが判明した.
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