多様な感覚-運動課題中に生じる中枢内感覚系の変化を調べることは次のような理由により、身体運動調節能を明らかにする為に重要であると考えられている:運動課題や精神課題中の余分な情報は円滑に目的とする課題を遂行するためには障害となる。そこで本研究の目的は中枢内感覚系の変化を反映していると考えられている体性感覚誘発電位成分が多種な感覚干渉課題中にいかなる変動を示すかを明らかにすることである。 本研究結果を要約すると次のような通りである。 (1)導出部位F3における体性感覚誘発電位P20成分、N30成分、P40成分はブラッシング課題中に著明な減少を示した。さらに体性感覚誘発電位P20成分、P40成分はコイン分類課題中に著明に増加した。逆にN30成分はコイン分類課題中に減少を示した。 (2)導出部位C3'においては体性感覚誘発電位N20成分はコイン分類課題中にのみ減少を示した。体性感覚誘発電位P25成分、N35成分はブラッシング課題中で有意な減少を示した。 (3)導出部位P3においては体性感覚誘発電位N20成分はブラッシング課題中に増加を示した。 逆に体性感覚誘発電位P25成分、N35成分はブラッシング課題中に減少を示した。 それゆえ、本実験結果から感覚情報は体性感覚誘発電位の変動に重要な影響をもっていることが確認された。さらにこの体性感覚誘発電位成分の変動は随意動作において著明に生じていることが確認された。
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