研究概要 |
加齢に伴う筋出力の機能的変化を調べるために、167名の健康な中高年女性(年齢31歳から79歳)に関して、上肢および下肢の関節運動で発揮される機械的パワーの測定を行った。パワー測定装置は、独自に開発したパウダーブレーキを負荷とするダイナモメーター(Power Processor II)を用いた。異なる電圧をパウダーブレーキに供給することにより、異なる等張性負荷を設定することができ、その結果それぞれの負荷条件化での力、速度およびパワーが測定される。 動作は一関節動作として、肘関節屈曲(EF)、膝関節伸展(KE)、股関節屈曲動作(HF)であり、二つ以上の関節が関係する動作として、ハイクリーン動作(HIC)を採用した。その結果、どの動作においても加齢に伴いパワーは低下を示す。30歳から70歳にかけてのパワーの低下は、EFでは約50w、HFでは約90w、KEでは約200w、そしてHICでは約280wの低下を示している。HIC動作での力-速度関係は、加齢に伴い直線は左側にシフトしていくが、速度(縦軸)切片よりも力(横軸)切片の低下が著しいことが分かる。つまり、加齢に伴う力-速度関係の変化は、より大きな力発揮での動作速度が低下していくことが特徴といえよう。60歳代でのパワーの低下は、EF(67%)、KE,HF(約60%)、HIC(約50%)の順に顕著である。このことは、上肢よりも下肢の動作において加齢に伴いパワーの低下が大きく現れるといえよう。同様に超音波法で求めた筋肉厚は、上腕屈筋群、大腿伸筋群、そして腹直筋の順に加齢に伴う低下が著しい。従って、加例に伴うパワーの低下は上肢よりも下肢、または小筋群よりは大筋群において顕著に示される筋萎縮に起因していることが推察される。
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