研究概要 |
加齢にともなう筋骨格系機能の変化を、単および多関節動作で発揮されたパワーおよび部位別筋厚から検討を行った。測定対象者は、30歳から80歳までの日常定期的な運動習慣をもたない女性約200名であった上肢および下肢の関節動作で発揮されたパワーの測定は、独自に開発したパワー測定装置(PP-II,昨年度の本報告書で報告)を用いた。測定動作は、肘関節屈曲(EF)、膝関節伸展(KE)、股関節屈曲(HF)および日常生活で多く行われる動作として両膝を約90度屈曲したしゃがんだ姿勢から重量物を持ち上げる動作(HIC)を採用した。超音波法により身体各部位の、筋肉厚と皮下脂肪厚を計測した。加齢にともないパワーの低下は40歳からほぼ直線的に低下した。30最大の値に比較して60歳代の値は、67%(EF),60%(KE,HF)および50%(HIC)であり、上肢に比較して下肢の筋機能の低下が著しいことが示された。加齢によるパワー低下が最も顕著であったHICについて、力-速度関係を年代毎に示した。その結果加齢に伴い、力の低下は速度の低下より著しいことが示された。従って大きな力発揮での動作速度に低下が示されるとが特徴的であった。筋の発揮張力は筋断面積に比例する。筋厚の加齢変化をみると前述の機能面を裏付ける結果が得られた。つまり加齢に伴い筋の萎縮は上肢より下肢で顕著であることが示された。一方、骨塩量(腰部と脚部)と各動作で発揮された筋出力パワーとの間には、正の相関関係が示され、発揮パワーが大きい者は骨密度が高い結果が得られた。以上の実験結果は、中高年齢者において特に下肢のレジスタンストレーニングの必要性を示唆している。
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