本研究は、8週齡及び25週齡ラットを対象に5週間の自由運動トレーニングが中等度(20m/min)及び高強度トレッドミル運動(35m/min)でのヒドロキシルラジカルの生成と除去、還元型(GSH)及び酸化型(GSSG)グルタチオン濃度に及ぼす影響について明らかにした。トレーニングは安静時のヒドロキシルラジカル濃度に影響を与えなかった。トレーニング群において、中等度での運動後、肝臓、心臓、脳、ヒラメ筋とヒフク筋のヒドロキシルラジカル濃度は非トレーニング群に比較し、有意に増大したが、血漿中のヒドロキシルラジカル濃度は逆に減少した。高強度運動ではトレーニング群及び非トレーニング群ともに、血漿、心臓、肝臓、脳及び骨格筋のヒドロキシルラジカル濃度は有意に増大したが、肝臓では逆に減少した。トレーニングは、安静時における心臓のGSH濃度を増大させたが、血漿中のGSH濃度を減少させた。中等度での運動後、血漿、心臓、骨格筋、脳のGSH濃度は有意に増大し、高強度の運動では血漿及び全ての組織においてGSH濃度はさらに増大した。トレーニング群において、安静時の心臓及び骨格筋のGSH/(GSH+GSSG)比は、非トレーニング群に比較し、有意に増大した。中等度及び高強度運動群におけるこの比は非運動群に比べ有意に増大した。一方25週齡ラットにおいて、安静時及び運動後のヒドロキシルラジカル濃度とGSH濃度は8週齡ラットに比べ、有意に増大した。しかし5週間のトレーニング後、25週齡ラットの安静時ヒドロキシルラジカル濃度は8週齡ラットの値とほぼ同じレベルにまで低下した。これらの結果から、1)加齡によりヒドロキシルラジカルの生成量は増大し、2)トレッドミル運動はヒドロキシルラジカルの生成を高め、3)トレーニングはヒドロキシルラジカル除去能力を増大させることが明らかとなった。
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