研究概要 |
本研究は,指先での精密把握運動中の把握力コントロール,特に物体の重量変化への把握力調節機能が脳のどの部位によってなされるのかについて,SPECT脳血流量測定装置を用いて調べることを目的として実施してきた.平成7年度は、8名(以前の実験で他に6名)の健常ボランティアを被験者として安静時,異なる重量の物体の保持時,持ち上げ運動時,持ち上げ運動時に重量を不意に変化させる時の各局面における局所血流量をを測定した.持ち上げ運動中の把握力と指の屈筋及び伸筋群の筋電の測定,さらに各個人の脳MRI像測定も実施した.MRI像に基づいて各個人の脳マップ座標の作成及び,それに基づくSPECT像との重ね合わせ作業を現在行なっている.したがって,各部位の絶対及び相対血流量変化については,まだ十分な検討が加えられていない段階である.これまで検討してきた結果の一部として,安静時に比べて把握運動中には物体重量の大きさには関わらず対側(左側)の運動皮質運動野と第1感覚野の血流量が10〜15%程度増加することが分かった.また,2名については同側の小脳(虫様部)の血流量増加が明らかであった.1名については同側(左側)の運動皮質運動野と第1感覚野の血流増加も顕著であった.物体の重量差(200gと400g)は、把握力及び筋電量に明らかな差異が認められたが,それらによる脳の局所血流量には顕著な差異が見られなかった.不意の重量変化の影響については現在,検討中である.
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